口約束について
不動産の貸し借りの際にほとんどの方が賃貸借契約を結ぶと思いますが、中には「口約束だけで賃貸借契約を締結していない」といった場合もある様です。例えば、知人に部屋を貸す場合、短期間の賃貸の場合等でわざわざ契約書を交わす必要はないと判断し、口頭だけで契約を締結させているケースがあります。
古いアパートや、ビルなど、何十年も入居している方がいるような場合、契約書や更新契約書がきちんと残されていないケースもあります。部屋の貸し借りには、一般的に賃貸借契約書を作成し、お互いに署名捺印をするという事になりますが、口約束だけでも賃貸借契約は有効となります。これは、契約更新の際も同様で、「更新します」と借主が意思表示をし、貸主が合意した場合、更新契約書を作成しなくても有効に更新されるという事です。このことから、口頭で契約をしてしまった場合、もし何か問題が発生した場合には、「契約書は作ってないけど、口頭で約束した」と言われてしまえば何も反論出来ません。このくらいの約束なら覚えておけば大丈夫と軽く考え、口約束だけで、きちんとし書面を作成していなければ、トラブルへと発展する可能性があります。
賃貸借契約を結ぶ際は、トラブルを避けるためにも契約書類を作成し、どのような内容で契約をしたか事細かに記録をしておくことが大切です。もし契約の当事者同士でトラブルとなってしまった場合、話し合いで解決ができなければ、裁判所や弁護士に依頼をする事になりますが、証拠として契約書がなければ正確な主張が出来ません。原則口約束は有効ですが、トラブルになった時の事も想定し、きちんと証拠を残すという意味で、契約書の作成はとても重要となります。
また、契約書以外にも約束の裏付けとなる証拠として良く用いられるものが、覚書、念書です。覚書とは、契約書作成前や、既に契約済みの内容に補足や内容を変更した文書の事を指します。契約の当事者同士が署名、捺印をした上で、原則2枚作成しそれぞれが保管する事になります。一方、念書とは当事者の一方から差し入れる形式の文書です。念書のひな形の多くには、「念のため本書を差し入れます」といった記載があるように、相手方に対して一方的に渡すといった文書となります。覚書よりは有効性は弱いといった事もあるようですが、念書を書く事でこのような約束をしたという証拠にはなるので、口約束のみよりも安心となります。
大家さんと長い付き合いになればなるほど、「更新料を免除する」、「賃料を下げる」等、口約束のみで書面を省く事が出てくるかもしれません。しかし、「言った、言わない」のトラブルを避けるためにも口頭ではなく、きちんと書面化しておくことがとても重要なので、親しい仲であっても書面に残すという事を心がけることが大切だと思いました。