宅建セミナーに参加しました
先日宅建セミナーに参加してきました。今回のテーマは、来年4月に施行される民法改正、売買・賃貸についてでした。今回の改正は、「日本の取引上の社会通念重視」から「英米法的な当事者の合意重視」に転換する改正だと言います。民法改正後は、「瑕疵担保責任」が廃止され、合意を前提とする「契約不適合責任」が新設される事もあり、不動産取引の実務面では、契約書内に記載する特約等が今よりも重視される様になります。今日は、今回のセミナーで教えていただいた中から、民法改正の重要な変更点についてまとめてみようと思います。
□原始的不能について
現在の民法では、契約成立時点で建物が火災等で焼失していた場合の「原始的不能」に関しては、条文等なく契約は無効と解釈されています。しかし民法改正後は、原始的不能の場合であっても、債務不履行に基づく損害賠償を請求する事は妨げられない旨の規定が新設される事になるので、当事者が合意し契約をした内容であると考えられるため、契約は有効となり、契約の解除や損害賠償、目的物の回復等の追完の問題として対応する事になります。
□危険負担と契約の解除について
危険負担制度とは、契約締結後に履行までの間、天災地変等の理由で債務が履行できなくった場合の制度ですが、改正後は、履行拒絶の事由の一つと捉えられる事になるため、現在の民法の「債務は当然消滅する」という考えから「永久に履行拒絶」と変わります。債権者が債務を消滅させたい場合には、債務不履行による契約解除も可能との事です。
解除制度について一番変わったところは、債務者の「責めに帰すべき事由」がなくても要件が整えば解除が可能になるといったところです。催告解除と無催告解除の2パターンが条文に入る事になるのですが、その条文の中で、契約及び取引上の社会通念に照らして「軽微」であるときは解除が出来ないといったただし書がつく事になります。この「軽微であるとき」といった言葉が使われる事については、それぞれの契約によって判断される事になるようなので、特約を細かく決める必要もありますし、改正後の判例等にも注目が集まるとの事でした。
□契約不適合責任について
現在使われている「瑕疵担保責任」が廃止となり、改正後は「契約不適合責任」が新設される事になります。これまでの瑕疵担保責任では、目的物の欠陥に関する買主の救済手段としては損害賠償請求と解除の2種類でしたが、改正後は、追完請求や代金減額請求権が増える事になるため、売主の責任は今より重いものになり、買主には選択肢が増える事になるので、反対に買主が有利になる事になります。
また、権利行使の期間についても変更があり、現行法では、瑕疵を知ってから1年以内に権利行使が必要でしたが、改正後は、購入してから1年以内に不適合の事実を売主に通知をする事で、具体的な権利行使はその後で足りる事になります。この債権の時効については、債権者が権利を行使することを知った時から5年間行使しないとき、権利を行使する事が出来る時から10年間行使しないときとなります。今までの瑕疵担保責任の追及では、買主が瑕疵を知ってから1年以内に瑕疵に対する損害賠償請求や請求金額の根拠を示す必要等があり、買主にとって過度な負担となっていました。改正法では、通知をすれば、その後の請求等は消滅時効がありますが、今までよりも時間をかけて行う事が出来るので負担軽減にもなるとの事です。
以上、不動産売買における民法改正の重要点をまとめてみました。今回の改正では、今まで以上に契約の内容を明確にする必要があり、対応すべき手間も増えてくる事になると思います。また、それぞれの契約によって判断されるケースが増えてくるとの事なので、実際に改正してみないとわからない部分も多く不安もありますが、事前に色々調べて準備しておく事も大切だと思います。