宅建セミナーに参加してきました
先日、宅建の実務研修会に参加してきました。民法改正に向け盛りだくさんの内容になっていましたので、今回は売買編を中心に内容をまとめて行きます。
○債務不履行に関する改正
債務不履行による損害賠償請求に関しては、改正民法では債務者に帰責事由がなければ損害賠償義務を負わない旨が明文化されます。今までも、判例ではこのように解釈されてきているので、実務としては大きな変更はないとの事ですが、条文の中には「債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰する事が出来ない事由」と明記されました。また、履行不能や契約解除の場合だけでなく、債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合にも、債権者は「債務の履行に代わる損害賠償」を請求できるとなっています。但し、拒絶の意思は「明確に」表示されている必要があるとされ、履行拒絶の意思が後々薄くなっていく事がない程度に確定的でなくてはならないとのことです。また、違約金の定めについては、旧法では、裁判所が裁量で損害賠償額を増減する事は出来ないとされていましたが、新法ではその規定が削除されましたので、仮に違約金の定めがあったとしても、裁判所が裁量で額を増減する事が出来るという事になります。解除については、債務者に「帰責事由」がなくても債権者は契約を解除する事が出来るという事に変わります。旧法では、債務不履行であっても債務者に「帰責事由」がなければ契約は解除できないとされていましたが、このように改められたきっかけは、最近日本各地で起きている天災によるものだといいます。天災で物件が毀損し、売主の物件引き渡しの予定が立たない場合、売主に帰責事由がないので買主が契約解除を出来ないままでいると、買主は代金支払い債務のリスクを負い続けなければいけなくなるのでそれを避けるため、債権者を契約の拘束から解放するために、帰責事由がなくても解除が出来る事としたとのことです。解除はもともと債務者のペナルティを与えるための制度だとされていたものを、債権者を守るための制度であると発想を転換し作られたものであるという事です。
○契約不適合責任
次に契約不適合責任です。今まで使われてきた「瑕疵担保責任」に代わり、「契約の内容に適合しないもの」という表現になります。買主の取り得る手段として、これまでの契約解除、損害賠償請求に加えて、追完請求、代金減額請求も認められる事になりました。瑕疵担保責任というと、重い責任であるため、売主としては、出来るだけ軽く、制限をかけて契約をするといった事もあり、買主を守るためのものではなかったといいます。今回契約責任となった事で、今までは「原始的瑕疵」に限られるとされていましたが、改正民法では契約の履行時までに生じたものであれば契約不適合責任を負う事になるとのことでした。
追完請求や代金減額請求については、具体的にいうと、瑕疵の修理や代替物を引き渡すこと、不足分を引き渡す事を請求できるようになり、この請求に売主が応えない場合には、催告をして、代金の減額請求を出来るようになります。瑕疵自体も隠れた瑕疵である必要がなくなったので、買主の善意・無過失は解除の要件には含まれない点も大きな違いになると思います。改正後は買主を大きく保護するように変わるので、売主としては完璧な状態で物件の引き渡しを行うためにも、インスペクションの実施等の対策が必然になるとのことです。
以上、不動産売買における民法改正の重要点をまとめてみました。今回の改正では、今まで以上に契約の内容を明確にする必要があり、対応すべき手間も増えてくる事になると思います。実際に改正してみないとわからない部分もありますが、今以上にリスク管理が重要になることは間違いないと思います。