銀行で借入れできないとき、ノンバンクで借りるべきか?(銀行員の考え方)
銀行で借入れできないとき、ノンバンクで借りるべきか?(銀行員の考え方)
銀行員はこう考えます
銀行の融資が審査落ちになったとき、ノンバンクを利用すべきか?
筆者は勤続30年の銀行員ですが、銀行では融資をお断りした場合、そこから先はお客様自身で決めることで、余計な口出しはできません。
たとえばお客様から
「消費者金融から借りようかと考えてるんだけど、どう思う?」
と聞かれても、銀行員には何もお応えできないのです。
しかし、心の中ではこう思っています。
どこから借りるか?は、本人の自由です。ノンバンクで借りることも否定はしません。ただし、銀行と付き合っていきたいなら、慎重に考えてください。
そこで今回は、実際に多くのお客様から借入の相談を受けてきた経験と、銀行員の視点で説明していきますので、参考にしてください。
(*あくまで個人的な見解であり、ノンバンクや特定の企業を否定するものではありません。実際に利用する場合は、ご自身で判断してください。なお、文中では銀行とある部分は、メガバンク、地方銀行から信用金庫などいわゆる金融機関とイメージしてください)
■ノンバンクで借りるべきか?〜銀行員はこう考えます
「ノンバンクで借りることも否定はしません。ただし、銀行と付き合っていきたいなら、慎重に考えてください」
冒頭お話ししたのが、銀行員として筆者が考える答えです。
その理由を以下の順に説明します。
<ノンバンクで借りるべきか?>
- ノンバンクとは?
- ノンバンクを銀行はどう見ている?
- ノンバンクで借りるべきか?
▲ノンバンクとは?
ノンバンクとは、銀行のように預金受入はせず、お金を融資する業務(与信業務といいます)だけをおこなっている企業です。
・ノンバンクの種類
ノンバンクの種類としては
- 消費者金融会社
- 事業者金融会社
- 信販会社
- クレジットカード会社
などがあります。
消費者金融会社は、テレビコマーシャルなどで知名度がある大手から、いわゆる街金やサラ金まで含まれますが、あくまで登録のある正規の貸金業者です。
また事業者金融とは、ビジネスローンなどを取り扱う事業資金に特化した貸金業者で、やはり登録されている会社です。
闇金などの違法な貸金業は、含まれません。
・貸すだけで預からないのがノンバンク
お金を融資することを金融と言います。その意味ではノンバンクも金融機関ともいえますが、最大の違いは、お金を預かるか?という点です。
これはノンバンクという名前からもわかります。
銀行ではないからノンバンクではなく、預金を預からないので金融仲介機能を持たないから、ノンバンクなのです。
・ノンバンクには金融仲介機能がない
金融機関は、預金として預かったお金に利息をつけて融資し、返済されたお金で、満期には預金を返します。
これを難しく表現すると「金融仲介機能」と言います。
金融仲介機能があるのが金融機関、ないのがノンバンクとも言えます。
この点から、ノンバンクを金融機関ではなく金融業者、貸金業者と表現している記事もあります。
・貸すお金の「出どころ」が違うだけ
金融機関は原則として、預金で集めたお金を融資します。
利益も確保しなければいけないので、融資金利は、預金金利よりも高く設定します。
これがいわゆる「利鞘」と言われるものです。
いっぽうノンバンクは、金融市場や銀行など金融機関から資金調達して融資しますので、基本的に金融機関より利息は高くなります。
とはいえ、預金も預金者から借りているお金、とも解釈できます。
したがってお金の出どころが違うだけで、金融機関とノンバンクに上下関係や、善悪などの差はありません。
ほかから借りたお金を貸す、という点では金融機関もノンバンクも、同じなのです。
・規制される法律が違う
金融機関の場合、銀行は「銀行法」、信用金庫なら「信用金庫法」といった法律で規制されます。
いっぽうノンバンクは原則として「貸金業法」で規制されます。
お金を貸す業者への規制、という点で共通することも多い両者ですが、ひとつ大きな違いがあります。
それは
ノンバンクには総量規制が適用されるが、金融機関は総量規制の対象外
という点です。
・ノンバンクには総量規制がある
過度な借入れから消費者の皆さまを守るために、年収などを基準に、その3分の1を超える貸付けが原則禁止されています(総量規制)。例えば、年収300万円の方が貸金業者から借入れできる合計額は、最大で100万円となります。
借り手の収入や借入状況、借入目的などに応じた適切な貸付条件などに照らして、借り手が返済期間内に完済することが合理的に見込まれない貸付け、つまり、「返済能力を超える貸付け」は禁止されています。
この「返済能力を超える貸付け」に該当するか否かを判断する基準の一つとして、新たな貸付けにより借入残高が、年収の3分の1を超える場合に、原則として返済能力を超えるものとして禁止されるのが、いわゆる総量規制です。
(1)総量規制の対象となる貸付けは、貸金業者の貸付けです。したがって、貸金業者に該当しない銀行などが行うローンや、信販会社の販売信用(ショッピングクレジット)は総量規制の対象にはなりません。
<引用
日本貸金業協会/貸金業法について/お借入れは年収の3分の1まで(総量規制について)
https://www.j-fsa.or.jp/association/money_lending/law/annual_income.php >
ノンバンクの企業が多く加盟する日本貸金業協会の説明が簡潔でわかりやすいので引用しました。
総量規制により、年収の3分の1を超える借入はできなくなりますので、ノンバンクを利用するときには総量規制に注意が必要です。
しかし、操業規制の対象外とはいえ、最近では銀行などの金融機関も自主的に年収を勘案して過度な融資をしない傾向にあります。
・金融機関との関係
融資するお金は、金融機関から融資を受け調達する場合も多いので(前出)、ノンバンクには金融機関の子会社や、グループ企業の一員になっているところも多くあります。
(例)消費者金融会社名(カッコ内はグループ)
- アコム(三菱UFJフィナンシャル・グループ)
- プロミス(SMBCコンシューマーファイナンス)
▲ノンバンクを銀行ではどう見ている?
金融機関では、ノンバンクを「高利な借入」と、ネガティブにとらえています。残念ながら、好意的ではありません。
・銀行はネガティブ思考だから
銀行は、基本的にネガティブ思考です。これは銀行と付き合った経験がある人なら、多分納得してもらえると思います。
預金者から預かった大事な預金を融資するので、回収できないと不良債権となり、銀行の信用に影響してきます。だから、思考回路は基本ネガティブです。
この点から、ノンバンクは一律「高利貸」で一括りです。
メジャーな大手消費者金融も、中小貸金業者も区別しません。そして、ノンバンクと取引していることが判明すると、さらにマイナスとなる恐れがあります。
・お金に困っているというレッテルが貼られてしまう
現実に困っているか?ただ、少しのあいだ借りただけだから、など考慮せず、お金に困っている人とレッテルが貼られてしまいます。
- ノンバンクで借りたのは、銀行では借りることができない人だ
- 高金利なノンバンクで借りているのは、それだけお金に困っているからだ
銀行で新規融資の相談をしても、ノンバンクと取引していると、こうイメージされます。
実際にはそうではなくても、業況が悪くて他の銀行で融資して貰えなかったので、しかたなくノンバンクを使っていると筆者なら考えます。
新規融資の審査では、個人事業主なら個人信用情報で消費者金融などノンバンクの利用が調査できますし、会社でも決算書や銀行の情報網(詳しくはお話しできませんので、ご了承ください)から調査できます。
調査の結果、ノンバンクの利用が判明すれば
「高利借入利用歴が判明。資金繰りに難あり、融資取上げは見送るべき」と筆者なら上司に稟議するでしょう。
*これはあくまで、銀行員の仕事としての話です。
繰り返しますが、ノンバンクや特定の企業を否定するものではありません。
また、銀行と融資取引中で、ノンバンクの取引がわかると、次の融資は難しくなりますし、利用中の融資にも影響してくるかも知れません。
- うちの銀行だけでなく、ノンバンクから借りているのは、相当経営がヤバいのではないか?
- そうだとしたら、次の融資は難しいな
これは憶測ではありません。
筆者が担当なら、このように考えるからです。
▲ノンバンクで借りるべきか?〜まとめとして
ノンバンクと取引するのは個人の自由です。
メリット、デメリットもしっかりと確認して、ご自身で判断してください。
どこから借りるか?は、本人の自由です。
ノンバンクで借りることも否定はしません。
冒頭の言葉を繰り返しましたが、ネガティブな銀行の、ネガティブな銀行員は、最後にこう付け加えます。
ただしこれからも銀行と付き合うつもりなら、慎重に考えるべきです。