住宅ローンの返済が困難になった場合の対処法
住宅ローンの返済が困難になった場合の対処法
「住宅ローンが払えなくなったら、どうしよう?」
現在、住宅ローンを返済中の人、あるいはこれから住宅ローンを検討している人、これは誰もが感じる心配です。
そこで今回は、住宅ローンの返済が困難になった場合の対処法について、実際にこうした相談にお答えしてきた銀行員が解説します。
■住宅ローン返済が困難になった場合の対象法3選
考えられる対処法はいくつもありますが、代表的な以下の3つを解説していきます。
<住宅ローンの返済が困難になった場合の対処法3選>
- 任意売却
- 整理
- リスケ
▲1.任意売却
任意売却とは不動産業者の仲介で売主を探し売却する、形態事態はごく普通の取引です。
なお似たような言葉で「競売」(銀行ではケイバイと読みます)がありますが、これは担保にしていた自宅を銀行が強制的に売却するものです。
・メリット
基本的に、任意売却のほうが競売より高く売れます。
専門業者が扱い、しかも強制的な競売では、売却価格は相場より極端に安くなります。
しかし任意売却なら、形態は良くある売買と同じなので、自分の希望する価格になるまで待つこともできます。
・デメリット
「待てる」と書きましたが、実際に希望価格で売れることは少ない、これが1つ目のデメリットです。
なぜなら、事情を察した買主に値引きを求められることがあるからです。
通常、不動産取引では売主、買主双方に仲介する不動産業者がついてくるものです。
これは、物件を探している人が不動産業者に頼み、売りたい人も不動産業者に頼み売買が成り立つ流れだからです。
任意売却の場合、不動産業者同士で情報交換がなされ、特に買主側の不動産業者に「足元を見られる」場合もあります。
しかし、単純に値下げすれば言い訳ではありません。
住宅ローンでは自宅を担保にしますので、ローンを全額返済できない価格では、基本的に銀行が売却を許してくれません。
こうなると、時間だけが過ぎていきます。
やがてローンは毎月の延滞が重なっていき、個人信用情報に異動(金融事故とも)が記録されてしまいます。
もちろんすべてがこうなるわけではありません。銀行によっては、ローン残高に満たない値段でも、そのあと返済すれば良いと売却に応じてくれる場合もあります。
しかしその場合に、賃貸住まいとなったときは、家賃とローンを同時に払わなければなりません。
もう一度ローンを借りることができるかわからない。これが2つ目のデメリットです。
任意売却の前に、再度住宅ローンが借入可能か?確認しておくことをおすすめします。
自宅を手放さなくなった原因がリストラや病気などであれば、新しく住宅ローン借りるのは、かなりに厳しいと思われます。
任意売却も、そう簡単にはいかないという点は、ぜひ覚えておいて下さい。
▲2.法的整理(債務整理)
弁護士や司法書士に依頼し、返済免除や減額をしてもらうのが債務整理です。
任意整理、自己破産などの方法があります。
任意整理:弁護士が債権者(銀行、消費者金融)と月々の返済額を見直す交渉をする
自己破産:借金が免除される代わりに、自宅など財産も手放さなければいけない
・メリット
債務整理を依頼すると、銀行や消費者金融からの督促は止まります。
交渉が成功すれば借金が軽減されたり、過払い金が戻ってきたりする場合があります。
・デメリット
依頼された弁護士などから連絡が来ると、あとは弁護士と事務的に手続きするだけです。
当然ですが、新しい借り入れを申込んでも、借り入れはできません。
これは、他の銀行や消費者金融に申し込んでも同じです。
自己破産などの記録は、個人信用情報に登録されます。
借り入れの申し込みがあると、審査する側ではこの個人信用情報をチェックするので、その時点で即審査落ちとなります。
それ以前に、債務整理を隠し借り入れ申し込みしたことで、イメージは更に悪化してしまいます。
ネットの記事では
「自己破産など、個人信用情報の異動情報は5年経過すると抹消されるので大丈夫」
などといった記載も見受けられます。
確かに個人信用情報としては5年経過で抹消される場合もありますが、自己破産された銀行などでは半永久的に記録が残りますので、こうした記事には同意できません。
ちなみに個人信用情報は、業務提携などにより銀行間、あるいは銀行と保証会社やクレジット会社などで共有される場合もあります。
したがって他の銀行なら借入できるといったこともありません。
▲3.リスケ
返済が困難な住宅ローンを、無理なく返済できる金額まで減らすのがリスケです。
リスケとはリスケジュール(reschedule)の略です。
直訳はスケジュールをもう一度組み直すといった意味で、現在ではビジネス用語として使われるようになっています。
住宅ローン以外にも、事業資金借入の返済条件見直しもリスケと呼びます。
・メリット
毎月返済が延滞していた場合には、リスケすることで延滞が解消(リセット)されます。
例えば3ヵ月返済が延滞していたなら、3ヵ月分の元金は据え置いたまま、利息だけ払い、以前より減らして返済していく、といった具合です。
延滞がリセットされるので、督促もなくなります。
自宅にも、そのまま住み続けることができます。
リスケしていることも、それ自体は個人信用情報に記録されませんので、異動情報、つまり俗に言う「ブラックリスト」には該当しません。
ただしリスケする前までに長期間(60日間または3ヵ月以上など)延滞していると、その事実は異動として記録されていますので、注意が必要です。
・デメリット
デメリットの1つ目は、断わられる場合もある点です。
例えばギャンブルなどで借金が嵩んだなどでは、リスケしてもらえないこともあります。
こういった人をリスケすると、真面目に返済している人に対し不公平だからです。
タダではリスケしてもらえない、苦痛感じる場合もあるのが2つ目のデメリットです。
リストラや病気など同情すべき事情だとしても、やはり簡単にリスケしたなら不公平に感じる人もいるでしょう。
その代償というわけではありませんが、住宅ローン返済を減らす見返りとして、家計のムダも減らさないとリスケしてもらえません。
やりくりに困ってローンが返せない状態なのですから、当然ながら生活はかなり切り詰めているはずです。
しかし銀行は、リスケせず返済している人に向けて
「更に家計を見直しさせたので、みなさん納得してやって下さい」と言いたいのです。
実際に、家計の見直しを拒否したなら、リスケを断わっても良いことになっています。
▲まとめ
自宅を手に入れる住宅ローンは、その他の借金とは区別され、手厚く保護されています。
例えば平成21年施行の金融円滑化法では、住宅ローン債務者から依頼があった場合、原則として銀行はリスケを拒絶してはいけないと国から指示されていました。
金融円滑化法は終了しましたが、銀行ホームページでは返済に困ったら相談して下さいと必ず記載されています。
リスケも簡単にはしてもらえませんが、それでも最善だと銀行員の私は考えます。
たとえば任意売却しても、もう一度住宅ローンを組める保証はありません。
債務整理をすれば、債務の負担は軽くなりますが、新しい借り入れはまず無理です。
もちろん、リスケしている間も新しい借り入れは難しいと思いますし、そもそも更に借り入れを増やすべきではありません。
それでもリスケは検討する価値はあります。
何よりも、リスケできれば家は残りますし、失う物はほとんどありません。