カードローン(キャッシング)利用の利便性と注意すべき点
今回はカードローン(キャッシングも含む)利用の利便性と、注意すべき点を銀行員が解説します。
特に注意点は、個人事業主の人などで事業資金融資を利用している人に向けた内容なので、参考にして下さい。
■カードローン(キャッシング)利用の利便性
利便性は主に2つあります。
- すでに「ワク」があるので、審査不要ですぐ利用できる
- 必要最低限の利用をすれば利便性が高い
▲すでに「ワク」があるので、審査不要ですぐ利用できる
一般的に事業資金融資の場合
- 借り入れ申し込みをして
- 融資審査を受けて
- 審査が通り契約して
- 事務的手続きを待って
- 口座に融資金が入金される
といった流れで、最短でも1週間から長ければ1ヵ月以上時間手間がかかります。
これがカードローンでは「融資ワク」(カードローンの借入限度額、極度額とも)がすでに設定されているので、必要なときには審査無しですぐ利用できます。
事業資金にも、融資ワクが数百万円から数千万円の大型カードローン(当座貸越とも)がありますが、一般的なカードローンと仕組みは同じです。
・カード以外にも借り入れ方法が多彩で時間も自由
カードローンと言うくらいですので、借り入れ専用のローンカードを使えば、取引金融機関以外でも提携するATMやコンビニでも借り入れが可能なので、銀行に行けないときには便利です。
また利用時間も年中無休、深夜対応可能なものもありますので、利便性は高いと言えます。
▲必要最低限の利用をすれば利便性が高い
カードローンでは、必要な時に必要な金額だけ利用して、速やかに返済できれば利用日数の利息支払だけですみます。
・証書貸付や手形貸付との違い
事業資金融資で扱う証書貸付や手形貸付は、たとえば3百万円が必要な場合、借り入れすれば3百万円が口座に入金されます。
いっぽうカードローンでは、融資枠が3百万円あっても、利用しない限り借り入れしたことにはなりません。当然利息も発生しません。
・利用日数だけ利息を払えばいい
上記したように、カードローンは必要になるまで使わなければ利息はかかりません。
3百万円必要だけれど、今すぐ出なくても良い場合でも、証書貸付などを理由すると即座に利息と元金の支払が必要になります。
このように必要最低限の利用をすれば利便性が高いのが、カードローンのメリットです。
■カードローン(キャッシング)の注意すべき点
注意すべき点も2つあります。
- 「資金使途違反」になる可能性がある
- 総量規制にも注意が必要
▲「資金使途違反」になる可能性がある
これは主に銀行系カードローンの場合です。
銀行カードローンではお金のつかいみち(資金使途)は原則自由です。
しかし「事業資金にはご利用頂けません」といったように、事業資金は不可というものが多いです。
カードローンは、一般的に生活費の補填や買い物代金など個人消費が基本です。
事業資金には事業資金融資があり、個人消費と事業資金は厳密に区別されています。
そのため、銀行カードローンを事業資金に使うことは禁止されているのです。
<参考 三菱UFJ銀行/カードローン「バンクイック」商品説明書
・銀行は資金使途違反に厳しい
銀行カードローンを事業資金に使ったことが銀行に知られると、そのカードローンを全額すぐ返済しろと言われたり、強制的に解約されたり、場合によっては事業資金融資の返済まで迫られる恐れがあります。
そのくらい「資金使途違反」に対して銀行は厳しく対応する場合があるので、注意が必要です。
なお、この点にどう対処すべきか?は後述します。
・銀行以外のカードローンは?
消費者金融系のカードローンには、事業資金が不可でないところもあります。
例「資金使途は自由(ただし生計費に限る。 個人事業主の場合は生計費と事業費)」
- 生計費:自分の買い物、光熱費から遊興費までのいわゆる生活費全般のこと。
- 事業費:備品購入や事務所の光熱費、交通費など
この場合も、いわゆる事業資金(運転資金、設備資金)とは明記されていません。詳細は個別に確認して下さい。
<参考 プロミス/カードローン「フリーキャッシング」商品内容
▲総量規制にも注意が必要
貸金業法の総量規制により、原則として個人年収の3分の1を超える借入はできません。カードローンもこの規制対象で、注意すべき点があります。
・総量規制とは?
総量規制とは、借りすぎ防止のために、年収の3分の1を超える貸付を原則禁止するという内容です。
貸金業者(消費者金融など)が、その人の返済能力を考えずに貸し付けることを禁じるもので、貸金業法という法律で決められています。
銀行などの金融機関は貸金業者ではないため、この総量規制の対象ではありませんが、最近ではやはり貸しすぎ防止の観点から、自主規制として総量規制と同様な基準でカードローンの審査をしています。
また、住宅ローンなどは特別扱いの融資として、総量規制の対象外(除外貸付)です。
いっぽう事業資金借入も、総量規制では特別扱いの「例外貸付」となります。
例外貸付とは「これを借りることで総量規制を超えてしまう場合も、例外的に認められる」借入です。
このように法律で定められているので、カードローン(総量規制対象)を借りて、事業資金(総量規制の例外貸付)に使ってはいけないのです。
この場合も、事実が判明し銀行判断によっては、事業資金の全額返済を求められる可能性すらあります。
・カードローン申し込みでウソをつくとペナルティも
カードローンを申込むときには、利用している借入の記入欄があります。
審査過程での個人信用情報などで調査はしますが、あくまで自己申告です。
したがって、申込者がウソをついたり借入を隠したりすれば、本当は年収の3分の1以上なのに、カードローンを借りることが可能になる場合もあります。
もちろん申し込みでウソをついたことが判明すれば、全額返済などペナルティがあります。
では「なぜ事業資金はダメなのか?」「具体的にどんなペナルティがあるのか?」など今回はカードローンと事業資金の関係について、銀行員の私が過去の例を用いながらお話ししていきます。
(なお「ビジネスカードローン」「事業資金カードローン」といった名称はすべて一般的な事業資金借入です。ここでいうカードローンはあくまで個人が利用するカードローンです)
カードローン利用中、利用を検討している人、特に会社経営者や個人事業主の人は参考にしてください。
■まとめ
カードローンを事業資金に使ってはいけないと説明しました。
しかし、これも考え方次第です。
例えば、あなたが個人で事業をおこなっているとします。
銀行から事業資金融資を借りていて、カードローンのワクも持っている。
事業資金で50万円必要となり、しかも明日までに払わなくてはいけないとしたら?
- カードローンで50万円借りて支払った
- 生活費から50万円支払い、生活費の補填としてカードローンから50万円借りた
どちらも「カードローンで50万円借りた」事実は同じです。
要は考え方、そして注意すべきはカードローンで直接事業資金支払をしたり、カードローンで借りたお金を事業資金の口座にすぐ振り込んだりしなければ良いのです。
そして、税理士など専門家に相談して税務上でも問題とならないように対処していくなら、資金使途違反もそれほど心配する必要はないでしょう。